『デキャンタージュ』とは。
飲む前に、『デキャンタ』と呼ばれるガラスの容器にワインを移しておくこと。
<ちょこっと補足>『デカンタ』?『デキャンタ』?
カタカナ読みは、どちらでも大丈夫。同じ意味です。
ただし、その必要性や効果は、ワイン通のなかでも意見の分かれるところで、個人の好みによるものが大きいのも事実。
ちなみに、専用の『デキャンタ』がなくたって大丈夫! 空のワインボトルを洗っておいて、これから飲むワインを一度その空ボトルに移し替え、もう一度もとのボトルに注ぎ戻してみてください。短時間『デキャンタージュ』したのと同じ効果が得られますよ。
今回は、どんな時に『デキャンタージュ』すると良いのか、まとめてみたいと思います。
なるほど! 『デキャンタージュ』する理由
なんといっても、その目的は、ワインを『開いている』状態にすること。ワインを酸素に触れさせることで、いわゆる『閉じている』状態から、強い渋みやアルコール感を和らげ、バランスの取れたワインの豊かな香りを楽しめるようにするのです。
<ちょこっと補足>ワインの状態:『閉じている』&『開いている』
ワインのことを『閉じている』または『開いている』と表現することがあります。
『閉じている』ワインは、タンニンや酸味が強く、あまり香りを感じることができません。『デキャンタージュ』によって、渋みがやわらかくなり、ワイン本来の豊かな香りを楽しめる状態になります。これが『開いている』ワインです。
赤ワインの中でも、特に複雑でパワフルな味わいを持った若いワインは『閉じている』ものが多く、『デキャンタージュ』によって、グッとおいしく味わうことができたりします。
ちなみに、ワインを飲むときにグラスをクルクルする気になるあの動作。カッコつけだけでは、ありません! 同じようにエッジを和らげ、香りや風味を最大限に楽しめるようになる効果があるんですよ。
また、『還元臭』をもつタイプのワインの場合も、『デキャンタ』による効果に期待できます。この『還元臭』とは、ズバリ温泉の近くで感じる卵が腐ったようなにおいのこと。各ブドウ種が持つ香りを失わないように、醸造過程で使われる硫黄由来の酸化防止剤によるものです。この特徴的な香りは、『デキャンタ』に入れ、ワインが酸素に触れることによって、消えて無くなります。
それから、牧場のような強い土臭さを感じる自然派ワインが苦手な場合も、ぜひ試してみて欲しいです。『デキャンタージュ』してみると、ウッとなる香りは消えて、その陰に隠れていたフルーツの香りをもっと楽しむことができますよ。
♦︎自然派ワインについてはこちらの記事もどうぞ。
どのワインをどれくらい『デキャンタージュ』?
『デキャンタ』の効果が分かったところで、次は、どのワインの場合にどれくらいの時間すればいいのか、気になりますよね。
一番のオススメは、若くてパワフルな赤ワイン。ヴィンテージのまだ若く質の高い【ボルドー(Bordeaux)】、【バローロ(Barolo)】、南ローヌ(Rhone)地方の【ジゴンダス(Gigondas)】や【ヴァケラス(Vaquerays)】、またはアルゼンチン産の【マルベック(Malbec)】のトップクラスなど。・・・挙げだしたらキリがありません。この辺りのワインなら、飲む前に2時間くらい『デキャンタ』に移しておくと、ワインが開いて、より一層おいしくなります。
もしも『デキャンタージュ』による違いを実際に試してみたいなら、開栓直後にひとくち味見しておくのを忘れないでくださいね!
また、冷蔵庫でキンキンに冷やす必要のない、濃厚で複雑な味わいをもつ白ワインにもオススメです。とはいっても、やはり赤ワインほどの効果はないのですが。
♦︎ちなみに、ワインとサービング温度の関係について、詳しくはこちらもどうぞ。
VINUMでは、この間、ニュージーランドの造り手であるマン・オ・ウォー(Man O’War)による【ソーヴィニヨン・ブラン(Sauvignon blanc)】 + 【セミヨン(Semillon)】を飲んだのですが、これがボトルを開けたときは、なんとも硬く閉じている状態でした。そこで、この白ワインを適度に冷やし、『デキャンタージュ』。すると、鼻につく香りも消え、ワインの豊かな香りをバッチリ楽しむことができました。
逆に、『デキャンタ』を使うべきでないワインもいくつかあります。
例えば、年代物のワイン。古くなったワインは、香りや風味が非常に繊細で、酸素に触れることであっという間に消えてしまうことがあるからです。もったいない!
また、【シェリー(Sherry)】や【マデイラ・ワイン(Madeira)】、【トウニー・ポート(Tawny Port)】などの『酒精強化ワイン(fortified wine)』も。これらは、すでに酸素とコンタクトしているので、わざわざ『デキャンタージュ』するメリットがありません。ただし、【ヴィンテージ・ポート(Vintage Port)】の場合は特別で、澱と呼ばれる沈殿物を取り除く目的で使われることがあります。
♦︎『酒精強化ワイン(fortified wine)』については、こちらでも少ーしだけ説明しています。参考まで。
コツを知っておくと便利な『デキャンタージュ』。ぜひ取り入れて、もっとおいしくワインを楽しみましょう〜!