フランスワインといえば。
産地を意味する『アペラシオン(Appellation)』の表記システムを含め、ラベルの読み方がよく分からない! イメージがありますよね。(ドイツワインなど、もっとややこしいのもあるんですが、ここではまずフランスから。)
<ちょこっと捕捉>『アペラシオン(Appellation)』とは
法律に基づいたワインの原産地を示す呼称。ワインの個性は、土壌や気候、作り方などの影響を強く受けるもの。ラベルに産地名を表記するためには、使用するブドウ品種や醸造方法など厳しい条件が法律で定められている。
フランスには300以上の『アペラシオン』があります。
ラベルにはブドウの種類は明記されないことが多いため、その地域に馴染みがないと、ボトルを見てもどんなブドウを使ったワインかさっぱり分からない、なんてことに。ちなみに、アメリカ、オーストラリアなどを含む『ニューワールド』のワインラベルは、ブドウ品種を明記してくれるので、ずっと簡単なんですが。
そんなわけで、今回は、ちょっと敷居の高いフランスワインにも手を出してみたくなるように、ヒントを紹介したいと思います。
イタリアやスペイン、ポルトガルでもよく似たシステムが使われているので、ここで少し知っておいて損はありません。VINUMでも、よく知られたエリアについては、のちのちもう少し詳しく書いていく予定ですが、ここでは、とりあえず一番大切な入門編から。
ワインの格付け『AOC:アペラシオン・ドリジーヌ・コントローレ』 とは
フランスワインのラベルを理解するにあたって、『AOC:アペラシオン・ドリジーヌ・コントローレ(Appellations d’Origine Controlle)』は避けて通れません。日本語では、『原産地呼称統制法』と呼ばれるこのフランスのワイン法、2008年EU版の改訂を受け、現在『AOP(Appelation d’Origin Protegee)』と書かれているものもあります。基本的な考え方はどちらも同じです。
一言でいうと、法律で決められた原産地の名前をラベルに記載するためには、いろいろな条件をクリアしなくてはいけないということ。指定された地域でワインを生産するだけでなく、許可されているブドウ品種のみを使い、決められた生産方法に従うことが必須となるなど、かなり厳しいのです。
この『AOC』、最初はとってもややこしく感じるのですが、いくつか覚えてしまうと、ワインを選ぶときに、ラベルを見るだけでどんな味のワインかぐっと想像しやすくなります。
『AOC』の例
例えば、【サンセール(Sancerre)】のワインを見てみましょう。
ラベルには、『Sancerre』と『Appellation d’Origine Controlle』の表記。ブドウ品種などは一切書かれていませんが、これは、【ソーヴィニヨン・ブラン(Sauvignon Blanc)】を使った白ワインで、ロワール上流の決まったエリアで生産されたものと言えます。
同じブドウ品種を使ったワインだとしても、例えば、ロワール川を挟んで反対岸で作られれば、もう【サンセール(Sancerre)】の表記はできないんです。
ただし、下の写真のように【プイィ・フュメ(Pouilly Fume)】と記載されているかもしれませんね。これも『アペラシオン』のひとつです。
この2つのエリアの位置関係や距離を考えると、どちらも同じ【ソーヴィニヨン・ブラン(Sauvignon Blanc)】100%から作られたワインなのに、ラベル上まったく別の表記になるなんて、なんとも変な気がしますよね。ところが。実は、こんなに近くても、土壌の小さな違いやフランス語で『テロワール』と表現されるブドウを育てる環境の影響を受けて、大きく異なるスタイルのワインになってるんです。
『AOC』のさらに細かい格付け
地域によっては、この『AOC』に分類されるワインの中で、品質に応じたさらに細かい格付けが存在します。
上の【シャブリ(Chablis)】は分かりやすい例で、以下の4つに分類されます。
♦シャブリ・グラン・クリュ(Chablis Grand Cru):特級。この格付けのワインを生産できるのは、シャブリの町のすぐ横にある西向きの7つの小さな畑だけで、それぞれ異なる特徴をもつ
♦シャブリ・プルミエ・クリュ(Chablis Premier Cru):1級。何十年にもわたる高い品質が認められた47の畑でのみ生産される
♦シャブリ(Chablis):一般。シャブリの町の周辺で、土壌などの環境がよい場所で生産されるワイン。若いうちに飲むのに適している
♦プティ・シャブリ(Petit Chablis):4つの中では、一番下の格付け。エリアの外れで育つブドウを使うカジュアルなワイン
もちろん、上にいくほど品質もお値段もあがります。ワイナリーであるドメーヌ・ルイ・ミッシェル(Domaine Louis Michel)のワインを例にとると、こんな感じ。右にいくほど高品質かつ高価になります。
フランスには、現在300を超えるワインの『アペラシオン(Appellation)』が存在します。そんなの覚えるの無理! と思うかもしれませんが、ご心配なく。ワインを楽しむために、全部、暗記する必要なんてないんです。
有名どころをいくつか聞きかじって知っているだけでも、フランスワインを試すきっかけになると思いませんか?